生まれついて、耳の聞こえないことについて。
まず、小さいときからそうでしたが、聞こえないことが、本当に、人生に、物凄い重圧を受ける要因であることに気が付いたのが、中学生くらいです。
そのうち、治療法を探したこともありましたが、解決する前に、悪化が、進んでしまいました。
そういう人が、結構いるのですが、井波木彫の世界に、3人ほどいて、皆、それこそ、手の仕事が、他より優れていることで、ぎりぎり頑張れていると感じます。
私の場合は、修業に入り、普通なら、まず、お客様の対応と、彫刻家として大切な下積などの仕事を、しっかり覚えますが、之が、逆に、親方に、物凄い迷惑をかけることになるので、殆ど、適当なところで、先輩の御世話になってしまいます。
実演展示会では、とにかく、筆記具を、わざとらしく目立つ様に、用意しておき、目の前に、お客様がいらっしゃいましたら、洋服の裾をつまんで、引き留めてから、
「私は、耳が聞こえません、しかし、彫刻や、絵のことで、ご質問などありましたら、どんなことでも、満足するお答えは、出来ます。 ぜひ、私と、筆談で、お話を、お願いします」
そう言って、自信満々にお引き留めしていました。
もちろん、後輩が出来、先輩になる時に、先輩は、後輩に、いう事を聞かせねばならないので、威厳を示せと言う、
迷惑な先輩の助言を無視して、何を後輩に聞かれても、答えられるように、唯、本を読んだり、親方の話をメモしたり、テクニカルな事だけを、出来る範囲で、勉強し、答えるときは、自分が、初心者の時に感じた疑問と、突き合せて答えました。
しかし、それでも、中には、左翼活動に忙しい彫刻師もいて、耳が聞こえないことで頭も悪いと勘違いした、左翼井波彫刻師T・Fみたいに、話を聞かずに、いきなり洗脳しようとしてきたバカもいました。
さらに、せっかくお付き合いをして頂けそうになった、富山の美術商には、あなたは、障害者だから、普通の値段では、お付き合いできない、隣のお店に、障碍者施設が、制作したお人形や、いろんなアイテムと、同じ扱いをしたいという事で、例えば、ひと月掛かって制作した天神さまも、欅の飾り台、桐箱、天神様道具セットだけでも、6万近くしますが、すべてそろえて持ってきたら、7万で、取ってあげると言われました。
もちろん材木代金を入れると、赤字で、あまりにも、これはお付き合いを、お断りしました。
私も含めて、障害者は、皆、覚悟があるから、普通の顔で、生きているのです。
他には、どのような不条理を受けたかですが、健常者から見ましたら、大した事も無いようなことではあります。
1つ、他県での出張仕事に向かう途中、片道せいぜい一時間チョイナノを、職人大勢の乗り合いなので、耳の聞こえない私には、おしゃべりをただ見ていなければいけないので、物凄い苦痛ですが、左翼活動井波彫刻師フミアキと言うのが、運転手を買って出て、キーは保持したまま、とにかくゆっくり行くのです。
そうすると、皆色々おしゃべりを、楽しみますね。
しかし私だけ、話し声が聞こえないので、退屈な時間が延び、どうしても、黙り込んだり、寝込んだり、不機嫌になります。
そうすると、そこに付け込んだ、フミアキが、一人だけわがままやって折角の楽しい時間を害する嫌な奴と言ううわさを流していました。
普通の常識人は、それを信じたとしても仕方ありません、彼の嫁が、障害者を相手に福祉の仕事をしているので、
そういう弱点のつかみ方は、非常に壺を得ています。
これに対しては、まさか、得意の左回し蹴りで、KOなんて、子どもっぽい事は出来ないので、親方に、こういう事情で、トラブルは、避けたいので、自費でかまわないので、自分の車で、仕事場まで、行きますと言い、お金節約のため、片道3時間を、国道を使用して、通い、上手く過ごしました。
正直、この仕事については、交通費も当然もらえないので、赤字にならないだけでした。
それでも、こういう輩には、負けたくないです。
その翌日から、梅野氏と言う、信頼もあり、才能もある同僚職人に、「まだ、たかだか1時間ちょっとの道を、休み休み時間をかけて、走っているのか」と聞くと、「いや、まっすぐ帰っている」とのことでした。
フミアキ氏の目的が、無くなってしまったので、時間の無駄と感じて、やめたのです。
さらに一つ、仕事に入ると、先輩の私の道具を、知っていながら、先に持ち出しました!
これは、力ずくなので、対処しやすく、フミアキに対面し、「お前、俺のを勝手に持っていくなバカ者」
と、取り返しただけです。
しかし、形だけでも謝る事も無く、ほぼ毎日、同じことを繰り返していました、勿論、しつこいやつと思いながら、取り返すのですが‥
いま思えば、私が、暴力を振るうのを、待ち構えていたのです。
これを、1月以上我慢しつつ、忍耐強く用心もしていました。
些細な事は、これで済まないのですが、たぶん耳の聞こえない方は、左翼彫刻師フミアキのしてそうなことは、理解できると思います。
その後も、ある大きな神社の仕事で、4っつの龍を彫ることになったのですが、私のあずかり知らないところで、フミアキが、有ることない事を、親方に告げ口をし、「義男は、龍の仕事はしなくていい、フミアキにさせたい」という事を、言われるところまでいってしまいました。
先輩の仕事を、耳の聞こえないことをうまく利用し、横取りです。
フミアキ個人からそんな話があっても、叱って終わりですが、たとえ騙されているとしても、親方から直接言われたのであれば、了解以外にありません。
親方には、いろいろ、貴重で、楽しい仕事をさせていただき、何を言われても、了解する覚悟ですし、首を切りたければ、直接、何時でも仰ってくださいと申し上げておりますので、それはそれで腹は、くくれています。
そうこうしているうちに、何か月後か、工房初の、女流弟子と、同時に工房を、出て行ってしまいました。
一つ気が付いたけど、キタナカフミアキも、奥さんに子供が出来たばかりで、工房を去るのは、不思議でしたが、
あの、上手に立ち回って、自信満々の者が、出て行ったのだから、他にうまい道を見つけたのだろうとは思います。
それから一度だけ、車で、すれ違たけども、物凄く嫌味な笑顔を向けて、去っていきました。
耳が聞こえない事だけで、なかなか生きづらいものですが、誰でも、何かは、背負っているものだし、たぶん、
彼も、何かを背負わされているから、その重みにつぶされて、弱みに付け込むような事をするようになったのかも。
本当の障害は、一体なんだろうか‥ 耳の聞こえないという現実を、抱えて、多くの難聴者が、今でも、がんばっています。
2020年1月の天神様展示販売は、一つ気が付いたけど、キタナカに、見事に負けてしまいました。
これも、展示販売会初日に、子どもと、様子を見に行きましたが、早速、品のいい女性が、私の作品の前で、じっと鑑賞をしてくださっていまして、作者として、子どもに通訳を頼んで、説明を、させていただこうとしているところに、
彼が入り込み、べらべら何かをしゃべった挙句、鑑賞して下さっていた女性を、他の作品に、移動させてしまいました!
すぐに、事情を聴こうとしましたが、子どもが、喧嘩になるのを心配し、きつく止められてしまい、諦めました。
子供曰く、「パパのは、毎年、必ず売れているので、本当に良いお客さんで、解って下さるのなら、あんな妨害をされても、売れるはずだから」と。
しかし、その後、とうとう売れず、今年のお客様は、厳しいからだと、思わざるを得ませんでした。
それで、研究のため、持ち帰ることとし、井波彫刻会館に、取りに行きましたら、驚いたことに、
天神様の、杓を持つ右手を、付け根から、へし折られ、放置されていました!
会館からも、何の連絡もないので、職員のあずかり知らないところで、壊されたのです。
これは、器物損壊罪であり、販売妨害と言う、可愛いものを超えていました。
しかし、ここまで卑怯な事をできるのは、彼一人しかいないとは言え、証拠もなく、黙って破棄(より、良い表現のための、研究材料にしました)するよりほか在りません。
出来るだけ、被害の無い様に、自分のブログで、自分の作品は、ご紹介できるようにしたいとは、思っていますが、
展示販売会となりましたら、ある程度仕方ありませんが、こういうバカも、たまには存在するという事です。
こういうことを踏まえ、それでも、前向きに、がんばっていくのが、日本の職人というものですし、天才で知られる、
南部白雲2代目の、最後の直弟子としての、プライドです。
オヤッサンに、こんな耳の聞こえないバカを、弟子にするのではなかった‥等と言われたくないですもの。
まだまだ、負けないで、がんばります。
2021.14辻 海雄記